ポール・ケアホルムの名作⑦ PK11

PK11/Poul Kjærholm(1957)

ポール・ケアホルムが1957年にデザインしたPK11は、3本脚の均整の取れた美しいプロポーションのチェアです。

熟慮された素材、構造は無駄がなく、最も厳格で洗練された作品の一つとなっています。


PK11のデザイン

ダイニングテーブルとして多くご使用いただいているPK11ですが、ケアホルムはPK51ワークテーブルと組み合わせることを考慮してデザインしました。

PK11とPK51(1957)

デザインされた当初はアームの高さが650㎜と現在より低く(現在は690㎜)、PK51の天板の下にちょうど納まるデザインでした。

素材やサイズを検討するだけでなく、デザインの違うデスクとチェアそれぞれの安定性を考慮し、且つすべてのパーツが取り外せるように考えています。

例えばデスクのスチールの脚はシャープに、アッシュ材の天板によって斜め方向へのぐらつきを固定できるようにしています。

ではPK11はどうでしょうか。

PK11の構造

【ベース】

3本脚のPK11のベースはアルファベットの『H』と『T』のような形状に溶接したスチールを組みあわせ、ビスで留めています。

『H』型のフレームは前脚となり、チェアの前面を、『T』型は背もたれにつながる後脚とシートの中央を支え、集成材のアームレストによってぐらつくことなくしっかりと安定されています。

このフレームのモジュールはPK61のベースから発展しており、デザインもリンクしている部分がありますが、厚みや幅のサイズが同じであることには驚きました。

PK61 大理石天板
ガラス天板はベースの構造がよくわかります。
H型のフレームを彷彿とさせるさせるデザイン。

【アームレスト】

アッシュ材のアームレストはフレームを固定する構造体としての役割だけでなく、PK11の意匠の一つとしても大変魅力的です。

38枚もの集成材で作られたアームレストは一連のカーブによって材料を最小限の厚みに抑えた無垢材の弧を構成し、どの方向からも均等な強度を保っています。

アームレストの内面の弧は中心に近づくに従って後傾し、
テーパーをつけて薄くなっていきます。
外面は中心で重なっていますが、前面に近づくにつれて弧の形状が変わります。

円弧は2組の頂点で交わる曲線で構成されており、上下、内面、外面の4つの角度でそれぞれ違った表情を見せるため、光の当たる角度によってできる陰影もその美しさを強調します。

アームレストひとつにも魅力があり、幾何学と優れた木工技術によって生み出されたアート作品のようです。

【シート】

麻布で覆われた集成材のシートは曲面を描き、ビスと筒状のパーツを用いてフレームから分離して取り付けられています。

これによって見た目にはシートの面積は最小限となりますが、そのラインはむしろ強調され、アート作品の一部として存在感を放ちます。

パーツをデザインの一つとしてとらえて隠すことがなく、デザインに浮遊感を持たせることでそれぞれを際立たせるという構造は、ケアホルムらしい配慮を感じます。


【グライド】

PK11の脚先についているグライドは正面から見ると四角、側面からはコの字になっています。

これがどのようにスチールに取り付けられているか、想像できますでしょうか?

グライドは桝形になっており、ベースのスチールの切り込みにはめることで正面と側面で違う見え方を生み出すことができるのです。


納品事例

PK11の納品事例をご紹介します。







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ポール・ケアホルムの名作① PK80/81 デイベッド

ポール・ケアホルムの名作② PK91 フォールディングチェア

ポール・ケアホルムの名作③ PK54 / PK54A ダイニングテーブル

ポール・ケアホルムの名作④ PK33 スツール

ポール・ケアホルムの名作⑤ PK0 ラウンジチェア

ポール・ケアホルムの名作⑥ PK26 ハンギングソファ