ポール・ケアホルムの名作① PK80/81 デイベッド


PK80の誕生


スチールの可能性

デンマークのデザイナー、ポール・ケアホルムは、のちの代表作となるラウンジチェア、PK22をデザインするにあたり、弾力のあるスプリングスチールをフレームに活用し、成功を収めました。

PK22/Poul Kjærholm(1956)

1956年のPK22の発表以降、ケアホルムはソファやダイニングチェア、サイドテーブルなど、様々な家具においてスチールという素材に着目、その可能性を模索しデザインを試みました。


PK80デイベッドはこの時期のもっとも洗練された作品の一つです。

PK80/Poul Kjærholm(1957)

印象的なプロポーション、熟慮された素材、ジョイントのエレガントさ、パイピングを施した大きなマットレスなど、すべてにおいて完璧にデザインされたPK80は、ケアホルムの初期のデザインのアイコン的な作品となっています。


デザインの輪廻 リ・デザイン

PK80は、1930年にミース・ファン・デル・ローエとリリー・ライヒがデザインしたカウチがモデルとなっています。

その構造はゴム製のストラップと鏡面仕上げのスチール製の脚を備えたヒバ材のフレームに、革製のマットレスとピロークッションを乗せたものです。

このカウチは、ローマ時代の寝椅子を参考にデザインされています。

このように時代とともに変化する生活様式や美意識に合わせて新しい名作が生み出されていることが分かります。


ケアホルムはこのカウチをもとにピロークッションを失くしてシンプルな構造にし、フォルムを明確にしました。

また、極限まで無駄をなくすため、レザーやプライウッド、スチールなどの異なる素材による構造を敢えて見せるように考えました。

これは構造や素材について深く理解していたケアホルムの才覚であり、素材同士がデザイン的に、また機能的に共鳴すると考えたものです。

2017年9月に1年間のみの限定にて発売されたPK80 60周年アニバーサリーモデル

PK80の構造


魅せる構造の美

ケアホルムはパーツをデザインを構成する重要なひとつしてとらえ、その構造が見えるように考えています。

構造を見せることができるのは、パーツの一つ一つに十分な考慮がなされ、デザインの一部として十分に美しいという自信の表れであると考えられます。

荷重を支えるスチール製の脚部は非常にスリムなデザインとなっており、プライウッドを支える長手方向の枠からわざわざ分離され、美しい直方体のスチール製のジョイントで固定されています。

また、マットレスを支えるプライウッドはその荷重に耐えられる必要最小限まで薄くしました。

脚部は非常に薄く、対してジョイントは重厚感のある黒い直方体とメリハリを持たせています。
マットレスはパイピングとパイピングの間隔を調整し、視覚的に同じに見えるよう中央をわずかに広げています。

新しいジョイント Oリング

フレームとプライウッドの結合にはゴム製のOリングを使用しています。

これはパートナーであるコル・クリステンセンからのリクエストによるもので、このOリングを使用することで輸送が簡単にできるように分解、組み立てを可能にしました。

ゴム製のOリング。
いわゆる輪ゴムのような柔らかさはなくしっかりしています。広げるにはかなり力が必要です。
プライウッドには切り込みが入っており、スチールの枠を内側と外側から挟むように留めています。
枠と脚部のジョイント。直方体の切り込みの入ったパーツをスチールに差し込んでスクリューで留めています。
このパーツ一つでも芸術品のように美しい。

このOリングはPK22やPK61でマシンスクリューを使用した時と同様に、新しい構造、素材として注目を集めました。

当時の木工製品の接手と同じ役割を持ちながら、工場生産が可能、熟練の家具職人の技術も不要な画期的な構造だったのでしょう。


また、マットレスは底面に革製のタブが付けられており、このOリングを活用し挟み込むことで固定され、マットレスのズレを解消しています。

PK80は2000年にステンレススチールの改良が加えられ、現在も生産が続いています。


PK81の誕生


完璧な空間概念の極限

PK80は、1957年にデザインされ、その年にコル・クリステンセン工房でナチュラル、ブラック、レッドのレザーで生産が開始されました。

そして1959年、ポール・ケアホルムはデンマークのターンビーの新市庁舎のパブリックエリアに140×140㎝の正方形のデイベッドをデザインしました。

3台がアトリウムのために製作され、1991年にはさらに1台が追加になりました。

そのほかにも、この完璧な空間概念の極限ー美しい正方形のデイベッドは国立博物館やデンマーク国立美術館でも採用されています。


このデイベッドはのちにPK81としてコレクションに追加されました。


アートスペースでの採用


2004年、PK80はニューヨーク近代美術館(MOMA)の展示室のベンチとして採用されました。

公共の場で使用することを考慮して、フレームの高さを7㎝、マットレスの厚みを2㎝増やすことで座面を高くしています。

この特別なPK80はスペシャルオーダーとして製作が可能です。

※詳細はお問い合わせください。


PK80ディベッドは東京の国立新美術館でも見ることができます。


そのほかにも数々のアートスペースに採用されており、これは卓越した審美眼を持つ建築家や芸術家に評価された美しいデザインであることを証明しています。


PK80 納品事例


当店でもケアホルムの傑作に魅了されたお客様に納品させていただきました。

デイベッドを含んだリビングルームやエントランスの納品事例をご紹介いたします。

また、PK80は大阪店でもご覧いただけます。

大阪店ではオーラレザー/ウォルナットのPK80を展示しております。


隅から隅までケアホルムの奇才ぶりが堪能できるアイテムです。

ご興味がありましたらぜひお越しいただきじっくりとお試しくださいませ。







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