ハンス・J・ウェグナー 「自邸のためのダイニングチェア “PP701”」

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生涯に500脚以上の椅子をデザインしたと言われるデンマークを代表するデザイナー、ハンス・J・ウェグナー。そのウェグナーが自邸のためにデザインをしたダイニングチェア、“PP701”のお話を今回はさせていただきたいと思います。

 

<1965年デザイン PP701>

 

PP701は、ウェグナーが自邸のためにデザインをした作品です。所説ありますが、自邸のためにその製造を急いでいたウェグナーは、ありあわせの小さい木材を集め椅子の背もたれを作った、と言われています。また、木材を削り出した作品を得意としていたウェグナーですが、この作品の脚にはスチールを用いています。これも、製造を急いでいたためスチールを用い簡素にデザインされた、ともいわれています。このように、PP701はもともとウェグナーが自邸のために作り出した作品であったため、当初は販売予定はなかったようです。

 

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ウェグナーの自邸の設え。円卓を4脚で囲い大変スッキリとした空間となっております。

ただ、結果的にこの作品は、ウェグナーにとって今までの作品とは異なる新しい境地に達した作品となりました。小さい木材を集めて背もたれを作ることにより、より有効に無駄なく木材を使用でき、また、脚部のスチールは作品全体に軽快な印象を作品に与えています。「木材とスチール」の異素材を合わせることで大変モダンな印象を醸し出しています。

 

<PP701 デザインに隠された意味>

 

PP701の背もたれは、4つの木材を上下左右に組み合わせて作られています。そして、その中心部には十字型の「ちぎり」と言われるパーツが入っています。これは、各木材の接着の強度を高めると同時に、美的要素も兼ね備えています。上下の木材の間にも異なる色の木材が挟み込まれていますが、これにも理由があります。4つの木片を合わせて背もたれを作った場合、色味は同じにもかかわらず木目が合わず、継ぎ目の部分が不自然になってしまいます。それを解消するため、あえて異なる色の木材を挟んでいるのです。

 

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<ちぎりのバリエーション>

ご紹介したちぎりについては、ご選択の木種に応じて組み合わせが決まっております。オークやアッシュ、メープル等の比較的、白木に分類される木種の場合、ちぎりは【ローズウッド】。ウォルナットのような濃い色合いの木種の場合、ちぎりは【メープル】となります。ちぎりとそれ以外の木部でコントラストがはっきりとする組み合わせとなる事で、自然とちぎりの部分に視線が向かい、木目の見え方の不自然さを、より感じさせにくい組み合わせになっております。

 

アッシュ材。ちぎりは稀少銘木となっている「ローズウッド」
ウォルナット材。ちぎりは「メープル」
<アームの長さ>

 

 

PP701のアームの長さにも理由があります。ウェグナーは、ダイニングチェアにはアームがない方が使いやすい、とも考えていました。アームがあると、アームがテーブルの天板に当たってしまい椅子を奥までしまい込めないため、そのぶん場所をとります。また、椅子に座る際にもしっかりと後ろまで椅子を引いて正面にまわり込まないと座れません。毎食のことなので、何かと面倒になりがちです。

 

ただ、ゆったりとくつろぐためには、やはりアームがあったほうが良いとも、ウェグナーは考えていました。食事を終えて少しそのままゆったりと過ごす、そのような場面ではやはりアームがあったほうが良いのです。その結果生まれたのが、このPP701の「半分の長さのアーム」です。アームを短くしたため、ある程度テーブルの下まで椅子をしまうことができます。座る際も横方向から座れるので場所をとりません。それでいて、ゆったりしたいときには腕を置くにも十分な長さです。まさに「必要にして十分」な機能を兼ね備えたアームと言えます。

 

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<背筋が伸びやすいデザイン>

 

 

ダイニングは食事をとる場所ですので、基本的な姿勢としては「垂直」もしくは「若干前かがみ」になる必要があります。そのような姿勢になりやすいよう、こちらのPP701はデザインされています。具体的には、椅子をちゃんと引き奥までグッと座った際、「お尻が少し椅子から出るように」デザインされています。下の画像をご覧くださいませ。

 

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椅子に座っているのがデザイナーのウェグナーであり、立っているのがPPモブラーの当時の工房長、アイナ・ピーターセンです。二人は、いつも工房でこのように椅子のデザインを話し合っていました。

写真に写っている椅子はPP701ではありませんが、こちらの写真にも写っているように、ウェグナーはお尻が椅子から少し出るようPP701もデザインしました。人の背骨はS字のラインを描いているため、このようにお尻が椅子から少し出たほうが、背筋が立ちやすいのです。余談にはなりますが、ウェグナーがダイニング用にデザインした椅子は、基本的にこのようにお尻が出るよう、お尻の後ろ側が空いていると言われています。

 

<様々な姿勢への対応>

基本的には、垂直に背筋を伸ばして座ることを想定してデザインされたPP701ですが、お尻を座面の前に持ってきて座る少しルーズな姿勢にも対応しています。ちょうど次のような姿勢です。

 

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このような姿勢でも快適に座れるよう、背もたれは垂直ではなく若干後ろに傾斜しています。また、背もたれ上部が大変丁寧に仕上げられているため、背中が痛くなることもありません。これは背もたれ下部も同様で、深く腰掛けた際には背もたれの下部にも身体に接触するため、大変丁寧に仕上げられています。

 

<PP701の様々なバリエーション>

背もたれの木材はオーク・メープル・アッシュ・チェリー・ウォールナットから選ぶことができ、座面も数多くのレザーやファブリックからお選びいただけます。背もたれ・座面のお色味を変えるだけで大変印象の異なるチェアになります。

Style: "Neutral"

 

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デンマークにある、デザインミュージアムデンマークで使われているPP701
アッシュ材とブラックレザー座面の組み合わせによるPP701

_w9a2494ヴェンゲという木材を使用した特別仕様のPP701。※現在当店での展示はございません。

 

5当店にて展示中のPP701。アーム部分がウォルナットの仕様です。

 

<当店にご用意している PP701で選択頂ける各種サンプル>

 

当店にて、木種・レザー・ファブリックサンプルをご用意しており、また、PP701も現在展示しておりますので、是非ともお客様だけの1脚をお探しいただければ幸いでございます。

当店ご用意の木種サンプル。左からオーク、メープル、アッシュ、チェリー、ウォルナット。
ファブリックサンプルの一部。他にも多数ご用意しております。 (※選ばれる張地により、最低脚数等の設定がございます。詳しくは実際にお選び頂きながらお打合せできればと思います。)
各種レザーサンプル
【PP701】
サイズ :幅63cm / 奥行46cm /高さ68cm/座面の高さ43cmもしくは45cm

 

 

pp701 ミニマルチェア

 


【インテリアコーディネート】

※当店ダンスク ムーベル ギャラリーではインテリアコーディネートも行っております。

詳細はこちらのページよりご覧くださいませ。

 

 




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