ベアチェア 最上級のかけ心地を探る ~ 構造と製造過程 ~

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北欧家具にはたくさんの名作があり、どの作品も各々の素晴らしさがございます。また、椅子のかけ心地や相性は人により異なりますので、「どの椅子が一番良い」と言い切ることも難しいのが正直なところです。

ただ、その中でも間違いなく最上級のランクに位置されるであろう家具の一つとして、本日は名作「ベアチェア」をご紹介いたします。
 
 

pp19 通称 “ベアチェア”


 

【ベアチェア(pp19)とは】

「北欧家具の王様のような存在」でもあるベアチェア。現在はデンマークのPPモブラー社にて製造されており、正式商品名は“pp19”。デンマークを代表するデザイナー、ハンス・J・ウェグナーにより1950年にデザインされました。

数あるラウンジチェアの中でもかなり大きい作りをしており、見た目にもどっしりとしたボリュームを感じさせる佇まいです。

実際にベアチェアに座ってみると、身体全体をしっかりと受け止めてくれる安定感があり、そのかけ心地の良さは格別。腰をかけた際の何とも言えない安心感・信頼感は他に類を見ません。

座面の上であぐらをかいたり、横を向いて座ったり、まるでソファのように少しルーズな座り方ができる点も魅力です。

 

現在店舗でご紹介しているファブリック仕様のベアチェア。

【デンマーク屈指の家具工房 PPモブラー】

現在ベアチェアを製造しているデンマーク屈指の家具工房の一つ、PPモブラーは良質な木材にこだわり少数精鋭で製造を続ける数少ない工房として知られています。

PPモブラーという工房について当店でご紹介しているブログがございます。是非こちらも併せてご覧頂けますと幸いでございます。

デンマーク屈指の工房 PPモブラー


2019年には当店スタッフがデンマークにあるPPモブラーへ訪問し、実際のベアチェアの製造過程を見てまいりました。

工房内を撮影した画像も交えながら、製造過程におけるベアチェアならではのこだわりが感じられるポイントを以下にご紹介させていただきます。

 
 

【ベアチェアのこだわり①フレーム】

多くの椅子は各フレーム同士をネジやボルトを使用して組み立てていきます。

ところが、ベアチェアのフレームはネジやボルトなどを使用せず、木を組み上げることで作られています。木で組み上げることにより、緩みによって生じる椅子自体のガタツキが出にくく、長年の使用に適うよう耐久性や耐荷重性を高めることができるのです。

フレームにはビーチ材とパイン材を用います。構造の基礎となる部分はビーチで作り、ファブリック・レザーなどを張りつける部分は柔らかいパイン材を使用します。


 

2019年にデンマークのPPモブラー社を訪問した際の画像。フレームを組み上げているところです。

 
無事にフレームが組み上がりました。

 
 
後ろ脚はひじ掛けの下まで太い1本の木材が使われています。
 
 

完成したベアチェアの場合、後ろ脚はわずかに見えてくるだけですが、実はこのように後ろ脚はひじ掛けの下まで太い1本の木材が用いられています。

2本の木材を見えないところで接いだ方が価格は抑えられますが、接いだ部分が折れたり軋んだりすることがあるため、PPモブラーではこのように一本の無垢材を使用します。通常は見えないところではありますが、長く使えるための工夫が隠されています。


前脚も楔を使いジョイントします。見た目にも大変綺麗です。
 
 

このようにまずはしっかりとしたフレームを組み上げ、椅子としての土台を作ります。

次に、この組み上がったフレームに様々な素材を詰めていきます。
 
 

【ベアチェアのこだわり②素材】

ベアチェアのかけ心地の良さを作る要素の一つに選び抜かれた中材の使用が挙げられます。

外側からの見た目だけですと分かりづらいですが、ベアチェアの中材には、horse hair(馬の毛)、tow(麻)、palm leaves(ヤシの葉)、mattress of  mixed animal hair(ミックスされた動物の毛)、cotton(綿)、coil springs(コイル)、jute strap(黄麻のストラップ)、coil springs in linen bags(麻に入れたコイル)など、実に多様な素材が使われています。

それぞれの素材の持つ特徴・特性を生かし、1脚ごとに職人の手で調整しながら素材を何層にも重ねていきます。丁寧に工程を重ねていく事によってベアチェアならではの素晴らしいかけ心地が作り出されているのです。


 

中材に使用されている素材。特徴の異なる8つの素材を選び抜いています。
 

 
PPモブラーの工房にて

 
 
台の上に各素材が既に切り分けられた状態で整然と並べられています。
 
 
horse hair(馬の毛)、tow(麻)
 
 
各素材を何層にも重ね、製造しています。

 
 
【ベアチェアのこだわり③張り込み】

フレームが組み上がると、組み上がったフレームに各種素材を用い、職人の手によって丁寧に張り込んでいきます。
 

まずは両側面から張り込んでいきます。

 
 
背面

 
 
背もたれ部分には、コイルを詰めた麻の袋がずらりと並びます。
 

背もたれ部分には、麻の袋にコイルを詰めたものを用います。最終的には背面側にファブリックやレザーを強く引っ張りながら張り上げるため、これらのコイルが縮んだ状態となり、椅子に寄り掛かった際に適切な硬さが得られるように工夫されています。


座面下
 
 
【ベアチェアのこだわり④ 品質向上による新たな取り組みへの試み】

2019年に工房を訪れた後、2022年6月にも当店スタッフが再度PPモブラー工房を訪れました。

2019年のときは高さが変えられるテーブルを用いて作業する姿が見られましたが、2022年に訪問した際は新しい機械が導入されており、自由な角度に固定してベアチェアを縫い上げることが出来るようになっていました。
 

2019年の画像。このときは高さが変えられるテーブルの上にベアチェアを置き作業していました。
 
 
こちらが2022年の画像。テーブルの上ではなく、ベアチェアを挟み自由に角度が変えられる専用の機械に代わっていました。

 
  
縫い上げ途中のベアチェア。座面の上に見える白いものは機械のリモコン。リモコン操作によって高さ・角度・向きが変えられます。


 

 
おそらく、この機械のお陰で以前に比べて格段に作業性が上がったのではないでしょうか。品質の向上のため、今でもこのように新しい試みを行っているのだと感じました。
 
 

【ベアチェアの持つ最上級のかけ心地は細部へのこだわりが作る

このようにして、ベアチェアはデンマークのPPモブラー社で1脚ずつ丹念に製造されています。外から見ただけでは分かりませんが、実際にベアチェアにおかけいただくことで身体全体に感じられる安心感が、その品質を物語ります。
 
 


デザインだけでなく、構造・素材の用い方、職人の技術などすべてが備わり、初めてベアチェアは完成します。包み込まれるような安心感のあるかけ心地は圧巻で、デンマークの方の中でも「いつかはベアオーナーになりたい」という想いを持つ方が多いことも頷けます。

以下のインタビューブログでもベアチェアのことが出てまいりますので、是非ともご一読くださいませ。デンマークの方の家具や空間に対する想いが伝わってまいります、とても良いインタビュー記事と思います。 
 
 

インタビューブログ MY DANSK MØBEL ~⑫Frederik Mollerさん~



皆様にも、是非とも当店にてベアチェアの誇る圧巻のかけ心地をお試しいただけましたら幸いでございます。

(※展示状況は都度変わりますため、ご来店前にお電話もしくはメールにて展示につきお問い合わせくださいませ)。
 
 

レザー仕様のベアチェア(2022年12月。当店にて)
 
 
ファブリック仕様(2023年2月。当店にて)


pp19ベアチェア
ファブリック×レザーの組み合わせも可能です。

pp19ベアチェア
背もたれ部分のボタンをレザーに。ベアオーナーの遊び心が程よいアクセントをプラス。


pp19ベアチェア
張地や座面、背もたれ部のボタンの他、パイピング部分もカスタマイズ可能。脚部や肘置きの木種も選べます。

 

【PP19 ベアチェア】

■メーカー:PPモブラー

■デザイナー:ハンス・J・ウェグナー

■サイズ:W90×D95×H101cm

■商品ページ:pp19 ベアチェア

■お気軽に店舗までお問い合わせくださいませ。


 
 
 



 

【インテリアコーディネート】

※当店ダンスク ムーベル ギャラリーではインテリアコーディネートも行っております。

詳細はこちらのページよりご覧くださいませ。

 

 




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