
生涯に500脚以上の椅子をデザインし、現在も変わらず椅子づくりの名手として世界に名を馳せるデンマーク人デザイナー ハンス・J・ウェグナー。制作当時、ウェグナー本人もこのチェアが出来上がった際に自身の手がけた椅子の中で初めて納得のいく作品が製作できたと自信をもって世に送り出した1脚だと言われています。
また、PP501/PP503 ザ・チェアはウェグナーの名を一夜にして世界中に知らしめ、国際的な評価を得る事となるエピソードを持つ椅子としても知られる1脚です。
世界中の人々から『椅子の中の椅子』として知られる、ウェグナーがデザインした名作 PP501/PP503 ザ・チェアの持つ魅力をご紹介いたします。

ザ・チェアとは

PP501/PP503 ザ・チェアは1949年に開催された家具展覧会『キャビネットメーカーズギルド展』へ出品するため、ウェグナーによってデザインされました。
当時、PP501/PP503 ザ・チェアはデンマークの工房ヨハネス・ハンセン社が製作(JH501)し、座面と背もたれ部分が籐で編まれたタイプを出展、その翌年には座面がレザーのタイプのものが製作されています。
現在はPPモブラー社によって製作が続けられています。
中国の椅子から着想を得たデザイン

ザ・チェアは、中国 明代の椅子からインスピレーションを得てデザインされた椅子の流れをくむものになります。
ウェグナーが1940年代にいくつかのチャイニーズチェアをデザインしましたが、その中でフリッツハンセン社で製作されたFH1783をリ・デザインして生み出された椅子が、Yチェアの愛称で知られるCH24とPP501/PP503 ザ・チェアになります。
ウェグナーはチャイニーズチェアを大変気に入り、生涯をかけてリ・デザインすることを自身の仕事の軸として続けてきました。一つのモチーフに対してリ・デザインを重ね、有機的で洗練されたフォルムとなって誕生した椅子、PP501/PP503 ザ・チェア。非常にデンマークらしい家具の一つと言えるでしょう。
フィンガージョイントによる美しい接木の仕上げ
ウェグナーはアームと背もたれ部分を1枚の部材で形作らず、3つの部材を用意し、2箇所で木を繋ぐ方法を採用しました。
ヨハネス・ハンセン社で製作されていた時には、釘やねじを使わず組み接ぎによる仕上げだったため、継ぎ目を隠す目的として籐が巻かれていました。

後にフィンガージョイントによる接木の技術を取り入れることで強度が増し、仕上がりの美しさとを両立することができるようになりました。


強度とデザインが両立した脚部の特徴的なデザイン
PP501/PP503 ザ・チェアの脚部は中央に向かって膨らみを帯び、最も膨らみのある部分と座のフレームが接合されています。脚と左右の座枠とはホゾ組み、前後の座枠とはダボで組まれ左右の座枠のホゾを貫通しています。

また脚とアームはダボで組まれ、安定感のある座り心地を得るため脚にわずかに角度がつけられています。

この他、アームと脚部はアームの凸部分と脚部が滑らかに接がれ、一体感のある自然な仕上がりとなっており、アームから背にかけても滑らかなラインが大変美しく目を惹きます。
強度を考えながら各接合部分で様々な工夫が見られ、デザインと構造、そして座り心地の良さまでもが両立された椅子 ザ・チェア。これこそが『椅子の中の椅子』と言われる所以と言えるでしょう。
メディアでの報道によって世界中にその存在を知らしめたザ・チェア

1949年のキャビネットメーカーズギルド展への出展によって発表されたPP501/PP503 ザ・チェア。発表当初はデンマーク国内では注目されず、翌50年にアメリカで評判を得ることになります。
アメリカのインテリア雑誌でデンマーク家具を特集記事として掲載、PP501/PP503 ザ・チェアが大きく取り上げられた事でアメリカ国内で大きな注目を浴びることになります。またこれがきっかけとなり、デンマークだけでなく、国際的に高い評価を得ていきました。
その10年後、1960年にアメリカ大統領選挙テレビ討論会の中で、ジョン・F・ケネディーとリチャード・ニクソンそれぞれの候補者がPP501/PP503 ザ・チェアに座る姿がテレビを通じて映し出されたことで、多くのアメリカ国民の目に触れ、さらに有名になっていきました。
重い腰痛を患っていたジョン・F・ケネディーは、『座っていても疲れず、かつ、座る人が美しく見える椅子』という理由から、PP501/PP503 ザ・チェアをテレビ討論会の際に選んだと言われています。

この時座っていたモデルは、ヨハネス・ハンセン社製のJS503。
ウェグナーによってデザインされたPP501/PP503ザ・チェアは、そのプロポーションの美しさと掛け心地の良さなど、あらゆる点において完成度の高い椅子として知られる、唯一無二の椅子です。
ウェグナーとPPモブラーを代表するPP501/PP503ザ・チェア。大阪の当店でもお試しいただけます。
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