デンマークモダン家具デザインの鬼才、ポール・ケアホルム。彼がコペンハーゲン北部に建てた自邸のためにデザインした作品が木製パーテーションPK111です。2026年よりフリッツ・ハンセン社にて復刻することとなりました。
ケアホルムの考える「建築的オブジェ」としても名高いPK111ルームディバイダー(パーテーション)について、ディティールに迫りながら深く紐解きます。
自邸のためにデザインした木製の自立型パーテーション
ポール・ケアホルムのデザインといえば、大理石や金属などの硬質な素材や籐や麻を組み合わせた、シャープで厳格なデザインを思い浮かべる方が多いかもしれません。
けれども、このPK111ルームディバイダー(パーテーション)は、ケアホルムの作品の中でも非常に珍しい成形合板のみで構成された自立型のパーテーションになります。

建築家である妻・ハンナさんが設計した自邸で使うために、ケアホルム自身がデザインしたPK111ルームディバイダー(パーテーション)。海を望む大きなワンルーム構造の広々としたLDKにおいて、「ダイニングエリア」と「リビングエリア」を美しく、そして緩やかにゾーニングする非常に重要な役割を担っていました。
彼にとって家具とは単なる道具ではなく「空間を構成する建築の一部」でした。PK111ルームディバイダー(パーテーション)はその哲学を最もストレートに表現した名作と言えるでしょう。
光を吸い込み、影を落とすその立体的な佇まいは、ケアホルムコレクションの中で、これまでにない温容で構築的な表情をもたらしています。
「高さ140cm」が創り出す空間の居住性
PK111ルームディバイダー(パーテーション)の最大の特徴とも言えるのが、「高さ140cm」という絶妙なサイズ設計です。これは人間が空間の中で過ごす際の「姿勢と視線」に関する深い洞察が隠されています。
座ることで感じる豊かな密室性
リビングのソファやラウンジチェアに身を委ねて腰を下ろしたとき、140cmという高さは人間の視線を緩やかに、そして完全に遮ります。目に映る雑多な風景やダイニングエリアの動きが視界から遮断されることで、そこにはまるでシェルターによって包まれたかのような、心地よい安心感とプライベートな空間が立ち上がります。

たとえば書斎での読書、あるいはベッドルームでの休息において、この「座る・横たわる」姿勢のときに生まれる温かな居心地の良さは、現代の忙しない日常においてこれ以上ない贅沢な時間をもたらしてくれます。
立つことで現れる視覚的な連続性
一方で、立ち上がると140cmのパーテーション越しに、部屋全体の奥行きや窓の外から差し込む光の移ろいを見渡すことができます。完全に壁で空間を仕切ってしまうのではなく、視線の上方が見通せることで、空間における開放感と視覚的連続性が維持されるのです。


「空間を仕切りながら、繋ぐ」。この相反する要素を、たった一枚の美しいじゃばら状のパーテーションで解決してみせる鮮やかさこそ、ケアホルムが単なる家具デザイナーではなく、「家具の建築家」という異名を持つ所以と言えるでしょう。
Z型パネルを連結させるモジュール構造
PK111ルームディバイダー(パーテーション)は幾何学的なじゃばら形状が特徴ですが、これは単なる装飾ではありません。この立体的な折りと重なりが、スタンドなどの支持具を一切必要とせず、床に対して美しく自立するための構造そのものとなっています。

また、このパーテーションはZ型をした6枚のパネルで構成されています。ケアホルムはこのプロダクトを「理論上、無限に伸ばすことができるモジュラーシステム家具」として設計しました。
追加のパネルを既存のパネルの隅からスライドさせて挟み込むように結合することで、シームレスにどこまでも延長することができます。
また、パネルの上下を変えることで自在に形状を変えることができるため、空間ごとに合わせて仕切ることができます。


パネルに使われている素材は、直線が美しい木目を持つ「オレゴンパイン」を用いた積層の成形合板になります。オレゴンパイン特有の真っ直ぐに伸びる力強く美しい縦の木目がパーテーションの垂直性を際立たせ、空間に心地よい緊張感と上品な温かみを与えています。
クリアラッカー仕上げで施されたこの木部は、経年により深みのある飴色を感じさせる美しい色へと変化していきます。まさに、時とともに美しさを増していく、人生をかけてゆっくりと育てていく家具にふさわしい仕様です。
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